ぼくたちの飼い主であるお嬢さんは、平屋に住んで英会話の教室を開いている、猫と旅行が大好きなキャリアウーマンの美人だ。

  今では二つの家がそれほど違和感もなく建っているが、
   「お嬢さんが失恋したとき、すったもんだの末………、アメリカ留学したときホームステイしたウエスタン風の家が好きだったらしく、同じような家に住ませてくれないのならアメリカに永住すると我がまま通して、敷地の外れにあった雑木林を整地させて、自分のお城を強引に建てちまったのさ」と、茶トラのバッパが教えてくれた。


  ぼくたちの庭は、片隅の大きな樫の木を中心に、四季を色わけて花が咲き、辺り一面にクローバーや野草が広がっている。

  本館の庭の通り道になっている石畳のところには、夏になると猫じゃらしと呼ばれるエノコログサが固まって見付かる。それも町の空き地で見られる小さい緑のでは無く、河原の土手に生えている先の穂が金茶のキンエノコログサを採取してきて植えてくれたたんだ。


  ある日、お嬢さんは、手入れに来た植木職人に、「この雑草はそのままにして下さい。」と頼んだら、職人さんはちょっと怪訝そうな顔をした。

  「ツートンの遊び場所はここまでよ」と、お嬢さんがわざとらしく、足下でのったりしているぼくに念押しすると、「あっあ、猫ちゃん用ですか。」と、首をかしげながらも納得したようだ。

  そんな訳で、これが境界線の標識代わりだと知っているが、ここに来ると決まって本館を覗きたくなる。ダメと言われると余計に気になる、これが猫の習性なんだ。

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