本館の前に広がる庭は、手入れされた芝生に囲まれて、真中に巨大な樅の木が凛とそびえ立ち、毎年、クリスマス近くになると、キラキラと華やかに飾られる。


 本館の住人は、貿易会社を経営する旦那様と奥様、それに長男夫婦と赤ちゃん、お婆ちゃま、住込のお手伝いさん、通いの執事さん、いろんな人と一緒に、猫と犬が一匹ずつ住んでいる。
 
 
失恋事件の騒ぎのときに、お嬢さんの気をそらそうと旦那様が知恵を絞って買ってきたのが、グリーンの大きな目をアイラインでくっきりと目立たせた、銀色で長い毛のメス猫・チンチラのチン‥‥‥‥。

 ぼくはチンと呼ぶけどパトリシアなんて名前が付いている。チンはそのまま本館で飼われて、お手伝いさん相手に気ぐらい高く過ごしている。ぼくよりも年上なのに、時々しなを作って甘ったるい声で話し掛けてくる。楽しそうに笑っている内は退屈しないが、いつだって話の終わりには自分勝手なことばかり言うから口喧嘩になってしまう。 

  そして、本館の一番の甘ったれは真っ黒なメスのプードルだ。ティーカップ・プードルとかいってミニチュアよりも小さくて珍しいのだそうだ。名前はベベ。

  ぺぺはぼくが拾われてきた五年前、同じ頃に彼奴はざあます婦人のところからやって来た。ざあます夫人と言うのは金の鎖のついたメガネをかけたペットショップの女主人で、お客が金持ちだと見ると、使い慣れないくせに「何でもかんでもざあます」を連発する。

  ぺぺは小さい頃はよく芝生で一人遊びをしていたから、ちょっかい出したらすぐ泣き出して、いいつけっ子のおべんちゃらで、猫と遊ぶよりも人間のほうが好きなんだ。

  最初の頃は同じ大きさだったのに、今じゃぼくは六キロを超えたと言うのに、彼奴は精々三キロ止まりだ。もしかするとぼくがベベの牛肉をくすねたせいかも知れないが、育ちの良さを鼻にかけて我がまま放題に偏食するのがいけないのだ。                   

  さてさて、周りを見回したら女系家族に囲まれている。これが幸せか、不幸せか、この先のことなど考えたところでどうにもなるもんじゃない。

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