ぼくの一番の仲良しは茶虎猫のバッパだ。

 薄い赤茶の地色に途切れがちの細い線でこげ茶の横縞が走り、胸元には自慢のしずくの形をした白いロケット模様がある。

  最近では、顔や尻などに白いさし毛が目立って、かなり長生きしていることは確かだが、年齢不詳の避妊猫。 母猫代りと云うよりも、孤児のぼくはそれ以上の存在だ。 

  
日本猫の毛色の紹介

 バッパは生き字引のように物知りで、ぼくはいつもびっくりさせられたり感心したりするけれど、今も、じっとぼくを見つめているから、何かなと思ったら、しみじみした口調で、易者のように勝手なことを言いだした。

  「お前はメスの猫には頓着しないのに、人間様の女の子となると目の色変えて、どうも選り好みをするようだね。移り気の卦が出ている。気が多くて材木屋さんの相だ。ニャハハッ」


  「お前はな、美人や上品なのは敬遠して、タイプで言えばポッチャリ型、ファニーな顔付きが好きだろう。目は切れ長で、鼻はつんとした感じより、程よく丸く座っている。口元は唇がポテンとしたタラコ型。体付きは小柄、デカパイでデカシリ・・・」  

  そんなふうに決め付けておいて、
  「エッチを絵に描いたような茶髪の娘が通りかかると、お前は、あわてて振り返る癖があるから、だらしないしみっともないよ。」 と、いつの間にかエスカレートして怒っている。

  うーん、言い返す言葉が見付からないけど、バッパの退屈しのぎに叱られては間尺に合わない。 



  茶虎のバッパはテラスに置かれた三角屋根の犬小屋を寝倉にしている、

 でも、長年の野良猫生活が忘れられないのだろうか、それとも野良猫のポリシーなんだろうか・・・どんなに風が強くても、どんなに雨が吹き込んでも、頑固に人間様の部屋には入らずに、天下御免の青空生活を決め込んでいる。




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