『猫雑感、人は飼い猫に似る』 猫を飼う女性は、飼い猫に似るといわれる。 
気位の高い人は、気の強い猫。                       

 癇癪持ちの人は、神経質な猫。 昼寝の好きな人は、のったりした猫。 
ニコニコ顔のお人好しは、さしずめ日本猫であろうか。 人と猫が同じ家に住んで寝食を共にすると、人が猫に似るのか、猫が人に似るのかは定かではないが、数多くの愛猫家と知りあうと、それが満更作り話でないことを知らされる。

 私の二十余年に渡る猫人生の中で知りあった、どっぷりと猫に染まった猫友達とその飼い猫のイメージをダブらせて、思いつくまま歴史上の人物に適合させてみよう。

                    人物歴伝は三省堂「新国語辞典」を参照

  ★シャム 短毛、細長い三角の顔貌、胴体、四肢、尾も長くてスリム。
 甘えんぼうだが、やや神経質で、泣き声は甲高い。 日本に初めて紹介された西洋の猫、洗練された短毛猫の王様である。

 織田信長に関しては、「耶蘇会士日本通信」宣教師ルイス・フロイスの書簡で評されている。「この尾張の主は、年令三十七才なるべく、長身痩躯、髪少なし、声は甚だ高く、非常に武技を好み、粗野なり。………」 織田信長の化身、これ正しくシャム猫なり。
★織田信長・安土桃山時代の武将。1534〜1582 1560年、今川義元を桶狭間に破って大いに威名をあげ、ついで諸方を攻略して京に上る。 皇室を尊び、皇居を造営。安土城を築いて居城として、天下統一を半ば成し遂げたが、明智光秀に襲われて本能寺において自決。     
  この間、交通を便として商業を盛んにして、キリスト教を認めて西洋文化を取り入れるなど文化の発展に努めた。

  ★街の野良猫 日本には「二十世紀最大の発見・生きていた化石」といわれるイリオモテ山猫、そして希少なツシマ山猫、それらの野生猫は世界的に有名であるが、日本の家庭猫は、どこからやって来たのだろう。                       
  ある人は西洋の家庭猫と日本の猫は一目で見分けられるというが、ペルシャやシャムなどの混血の猫は判断できるが、いずれにしても血統を持たないルーツの知れない猫として、あんまり変わりは無いように思える。       
 古き良き日本では野良こそが日本を代表する猫であった。 農家に生れた日吉丸が木下藤吉郎になり、豊臣秀吉に立身出世をする千成りひょうたんの物語は、古き良き時代の純日本猫にほかならない。
★豊臣秀吉・幼名 日吉丸 木下藤吉郎 羽柴秀吉が1585年に豊臣を賜る。1536〜1598 終の織田信長に仕えて、本能寺の変の後、明智光秀を滅ぼして、諸国を平定して1590年に天下を統一。兵農の分離、検地、貨幣制度の改革、財政の強化に努めて集権体制を確立。大阪・伏見に築城。 1585年、関白となり豊臣氏を称して、翌年、太政大臣に任ぜられ、1591年に秀次にに関白を譲り太閤と称した。のち、二度にわたり朝鮮征伐を行なったが、戦いの半ばで病死。

  ★ペルシャ・ブラック
 長くてゴージャスな被毛、ずんぐりした胴体に丸い風格のある顔貌。その目は真ん丸に大きく開かれて赤銅色。 猫の王様、ペルシャ猫の中でも黒炭の光りを携えたブラックの毛色は、そこにいるだけで、他を圧した将軍の趣が感じられる。 

「鳴かぬなら、鳴くまで待とう、不如帰」 慌てず、騒がす、時の到来を待って天下を手中にした家康、正に将軍と呼ばれ、大御所として君臨した家康には、黒光りした貫禄のある静けさに、猫の王様を感じさせるブラック・ペルシャが相応しい。

★徳川家康。徳川初代将軍 1542〜1616 三河の国、岡崎城の城主・松平広忠の子、幼名・竹千代   少年時代は今川義元の人質となり、その敗死後、織田信長と結び、のち、豊臣秀吉と和し、1590年に関八州に封ぜられて、江戸に居城を定める。 1600年に関ケ原の戦いで対抗勢力を一掃して、1603年に征夷大将軍、1605年に将軍職を秀忠に譲り、駿府に隠居して大御所と呼ばれる。 大阪の陣で豊臣氏を滅ぼして、完全に天下を掌握して、江戸幕府264年の基礎を確立。

  ★ジャパニーズボブテールのミケ                      
  日本猫を基礎に改良された血統猫。目は卵形、頬骨高く、柔らかな三角形の願望、独特のボブテール(うさぎ尾) その柔らかな人恋しい姿態、鳴き声は日本美人を思わせる。中でも三毛は十二一重に包まれた平安の女流歌人を忍ばせる。

★小野小町(おののこまち)平安前記の女流歌人。 生没年未詳、六歌仙、三十六歌仙の一人。 情熱的な恋の歌をよんだ。非常に美人だったと伝えられて多くの伝説が残されている。

  ★アメリカン ショートヘアー
 約100年の歴史を経て、アメリカの家庭猫の理想像を求めて改良された。 血統猫の中でも唯一の「ワーキングキャット」と呼ばれて、丸みのある顔貌、がっしりした体付き、数多くの毛色の中でも最も人気が高い、鮮やかなシルバータビーのクラシックな縞模様、これこそアメリカを象徴する猫の代表であろう。

★ケネディ(ジョンF)1961年・米国・三十五代大統領  1917〜1963ニューフロンテア精神を唱え、黒人の差別待遇の廃止など、革新的施策を進めたが、1963年・テキサスのダラスで暗殺された。 主著「勇気ある人々」「平和のための戦略」

 
 
  ★アビシニアン
 家猫の発祥、あらゆる猫の歴史の初めに登場するエジプトの猫の面影を残して、野性的な風貌の中に優しさを持ち、身のこなしは素早くて、とても利発で、人の言葉を理解する。 一本一本の毛は三本から四本の色帯びに句切られて、太陽の下では金色に輝く独特の毛色をしている。 血統猫としての改良は、胸前のネックレス縞や四肢のブレスレット縞など、多くの縞模様を取り除くことであるが、その顔の古典的な目のアイライン、目尻から頬に流れる日本のラインは、その名もクレオパトラ・ラインと呼ばれる。 クレオパトラの腕に抱かれて眠ったアビシニアンは、その命を奪った毒蛇を退治して、人知れずに姿を隠した。 今、世紀の美女は野生味をたたえた利発な血統猫として再び人を魅力する。

★クレオパトラ、エジプト・プトレマイオス朝の女王。  最後の七世がもっとも有名。前69〜前30 美貌と才知をうたわれ、カサエル(シーザーはローマ皇帝の称)の愛人となり、その後押しで国を統一。のち、アントニウス、ついでオクタビアスを惑わそうとしたが失敗して、毒ヘビに身を噛せて自殺したと伝えられる。
 
  ★メインクーン
 アメリカの中西部、メイン州の寒暖の激しい荒れ地に育った猫。アライ熊との混血と噂されたように血統猫の中では最も大きい、そして、優しさを忘れない猫種である。 身長2メートルを誇ったスーパースター、ジョン ウエインのイメージを想わせる。 ロックの王者、エルビス プレスリーのイメージでもあるかも知れない。

★ジョン ウェイン(米国・西部劇スター) 古き好きアメリカを描いた映画・西部劇の第一人者として活躍した。 古き好き時代の米国人が西部に新天地を開拓していった物語の主役として、フロンティア・スピリットを感じさせるアメリカの顔である。 2mの長身で、「アラモ砦」「黄色いリボン」「リオブラボー」など数々の代表作がある。

  ★ヒマラヤン
 短毛猫の代表シャム猫と長毛猫の代表ペルシャ猫の交配により誕生したファンタスティックな猫種「ヒマラヤン」。 テムジンの野望は東洋のシャム猫に伝えられて、かのヒマラヤ山脈を越えて、西洋のペルシャ猫と巡り合った。 現代に輪廻した蒙古の勇者は、このヒマラヤンにオーバーラップされる。

★チンギス ハーン(ジンギスカン)本名・テムジン 中国・元朝の太祖ロケメ1167頃〜1227 内外蒙古を統一してその首長となり、更に、中央アジアからインド北部、欧州東部にまで遠征して欧州、アジアにまたがる大帝国の基礎を築いた英雄。

  ★シャルシリュー
 フランス原産、シルバーチップのグレーの短い被毛。 どっしりした体型にやや愛敬のある風貌。 20年以上も前に「フランスから来た猫の貴公子」というキャッチフレーズで日本に登場したが、いつの間にか幻の猫として忘れられた。 かの有名なナポレオンの懐に入った右手は、胃の痛さを押えていたといわれるが、革命により皇帝の地位を得て、フランスの威信をかけて戦争に明け暮れた、馬上のマント姿の下側に、その高ぶる心を癒すために小さなシャルトリューの子猫を忍ばせていたとは、どの歴史にも書かれてはいない新説なり。

★ナポレオン・(ボナパルト)フランスの皇帝、コルシカの生まれ、1769〜1821フランス革命に際して革命軍に投じて、1795年パリにおいて王党派の反乱軍を鎮圧。1797年にイタリア征討司令官、1799年にクーデターに成功して政権を握り1804年に皇帝になる。ナポレオン法典を定め、教育、産業を盛んにして大きな功績を上げるとともに、欧州諸国とたびたび戦って中欧の支配を確立。1805年英艦隊とトラファルガーに戦って敗れ、1812年ロシア遠征に失敗、1814年連合軍敗れて退位、エルバ島に流される。1815年脱出して再び皇帝として百日天下の支配を行なったが、同年ワーテルローの戦いに敗れて退位、セントヘレナ島に流されて病死。 

  ★スフィンクス
 誰もが猫とは信じられない。しかし、この猫を抱いてみると普通の猫よりも高い体温の温もりと、はっきりした鼓動、生きることの喜びが伝わる。 全身の被毛が失われた、宇宙からの来た未来の猫。 エネルギーの発散するままに上半身の衣服を脱ぎ捨てて、後世に残る芸術作品に取り組んだピカソ、その美の追及は地球を愛するメッセージとして人の心を感動させる。

★ピカソ(パブロ)スペインの画家、 1881〜 青の時代、桃色の時代、黒の時代を経て、ブラックらとともに立体派の運動を始め、更に古典調のものからシューレアリズムまで、多様な変化を重ねながら独自の作風を展開。                                    旺盛な創作意欲により絵画、彫刻、石版、その他の広い分野にわたって優れた作品を次々に発表。 二十世紀最大の芸術家といわれ、現代美術界にに大きな影響を与えている。スペイン内乱、ナチスの全盛時代を通じて、一貫してファシズムに抵抗、「ゲルニカ」の大作を描く。

  ★ペルシャ・ホワイトブルーアイ
純白の長い被毛をたなびかせるペルシャ猫のシンボル。 中でもブルーアイ・ホワイトのペルシャは、透き通った空の色、汚れの無い湖水の色を想わせる。 なぜか、神様のいたずらで、この猫は音の世界を消されてしまった。でも、愛猫家はその美しさを忘れることは出来ない。これは耳が不自由だったベートーベンの心に響く荘厳なメロディーに通じる。

★ベートーベン(ルードウィッヒ ファン) ドイツ             
  1770〜1827ボンの生まれ。古典派後期から初期ロマン派。晩年に耳が聞こえなくなったが、困難を克服して、独自の深い音の世界を展開した。 きわめて多くの作曲と傑作を残したが、代表作には、交響曲に第三(英雄)、第五(運命)、第六(田園)、第九。ピアノ曲「悲愴」、「月光」、「皇帝」。歌劇に「フィデリオ」など。

  ★ボンベイ
 バーミーズとアメリカン・ショートヘアー(ブラック)の交配によって誕生した、発達した筋肉質なボディ、サテンの輝きを持ったブラックの短毛猫。 火山の爆発によって地底に消えた幻の都「ボンベイ」から名付けられた。 比較的新しい猫種なのに、なぜか歴史の重さを感じさせる。

★ミケランジェロ 1475〜1564 イタリア・ルネッサンスを代表する彫刻家、画家、建築家詩人。 正確で克明な力強い肉体の表現に傑出する。 代表作・彫刻「ピエタ」「ダビデ」「モーゼ」シスチナ礼拝堂の天井画 壁画「創世記」「最後の審判」ピエトロ寺院などの建築。また、多くのソネットを残す。

  ★コーニッシュ・レックス
 上毛の無い、柔らかなウエーブした被毛、オリジナルにアーチした細身のボディ、耳は高く立ち、頬骨の発達したユニークな顔貌。爪先立ちで、どんなリズムにも反応して軽やかに体を踊らせる、そこにいるだけでメロディーが奏でられる。 パンチパーマのような被毛などと表現されるが、そのイメージは五線譜に書かれたモーツアルトの旋律にほかならない。‥

★モーツアルト(ヴォルフガンク)
 ドイツ 1756〜1791 幼児のときから非凡な才能に恵まれ、古典派音楽の楽器様式を完成、短命ながら、交響楽、室内楽、協奏曲、歌劇など多方面にわたって600余の作品を残した。 代表作、交響楽「変ホ長調」「ジュピター」、過激「フィガロの結婚」「ドン・ジョバンニ」「魔笛」
 
 ★チンチラ
 輝くシルバーの毛色、ふわりと被せられた長い被毛。 中でも、黒のアイラインに引き立てられたエメラルド・グリーンの目の色は、妖艶なまでの魅力をたたえている。 その仕草のどれもが、コケティッシュ、日本の愛猫家を異常なまでに虜にする。

★マリリン モンロー(米国・映画女優) 腰を振り振り歩くモンローウォークで知られた、米国・ハリウッドの銀幕を代表するセクシー女優。 ハスキーな歌声とやや甲高くて甘ったれな口調、切れ長でちょっと下がり目が魅力的。