『日本猫のルーツ』

 日本にはツシマヤマネコ(対馬)、生きた化石といわれるイリオモテヤマネコ(西表島)がいますが、これは古くから棲息する野生のヤマネコです。    

 古代エジプトでリビア山猫から分化して「イエ猫」が発祥したとされる頃、5〜6千年前の日本は縄文式時代、小さな集落が営まれて、漁猟と狩猟が中心の生活でした。その遺跡である貝塚からも猫科動物の骨が出土していますが、それは「野生の猫」とされるのが定説になっています。 

 左の写真は、「イエ猫(日本猫など)」の原型である、キジトラの猫・・・          


 さらに、約2000年前の弥生式時代には、集落が大きくなり農耕が始まりました。穀物が収穫されるとネズミが表われ、天敵の猫が登場して、その遺跡から発掘される猫の骨は多いのですが、どうやらこれも野生猫であったとされ、日本猫の祖先とする根拠は少ないようです。

 では、「日本猫」の祖先はいつの時代に表われたのか、その多くは謎のままです。

 日本の最古の猫に関した記述は、因果応報の仏教説話集「日本霊異記」(822年頃)に書かれたバケ猫の伝説です。(下記参照)

 更に、宇多天皇(菅原道真を登用した)の日記(889年2月26日御記)には、太宰府から献上された「真っ黒い唐猫」の様子が詳しく記述されています。この文中には比較対照される和猫のことは述べられていませんが、「唐猫」と明記されたことは、既に「和猫」が存在したことが推測されるかも知れません。もいかすると、大宰府の資料館には当時の献上品リストがあって、その中に唐猫のことが残されていないのでしょうか?

 そして、それ以後の書物「枕草子」「源氏物語」「更科日記」にも猫が登場していることから、「日本猫」のルーツは、今から約1100年前に大陸から渡来した「唐猫」が、貴族の間で飼育されるようになり、やがて、数を増やした猫たちは次第に庶民の手に入り、もしかすると、日本古来の土着の猫と交わり、「オリジナルな日本猫」として拡大されたと考えられます。


後記

 ふと考えてみると、遣唐船の630年代に始まり、仏教や薬学などを広くもたらした鑑真和上も754年に日本に上陸されています。このことは、この頃に、既に唐の国から「日本猫の始祖」がもたらされたと考えることに不思議はありません。
 
 いずれにしても、私たちの愛すべき日本猫は高貴な猫たちの血をつなぐ子孫なのです。